2012年9月アーカイブ

8月3日に国会で成立した「改正労働契約法」が、同年8月10日に公布されました。

この改正法は「有期労働契約」に関する新しいルールを定めるものであり、企業における有期労働契約者の人事労務管理に大きな影響を与えるものです。

 改正法が定める3つのルール

(1)有期労働契約の無期労働契約への転換

有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたとき、労働者の申込みがあった場合には、労働者に「無期転換申込権」が発生し、これを行使した場合には、使用者はこれを承諾したものとみなされます。つまり、5年を超えて有期労働契約が反復更新された場合には、これを期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換しなければならないのです。
なお、原則として、6カ月以上の「空白期間」(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間を通算しないこととされています。

(2)「雇止め法理」の法定化

最高裁判所の判例で確立しているとされている「雇止め法理」に関して、その内容が法律に規定されました。一定の条件を満たした場合には、使用者による労働者の雇止めが認められないことになります。

(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることが禁止されます。

 上記改正内容の施行日ですが、(2)については公布日(8月10日)から施行されています。(1)・(3)については公布日から起算して1年を超えない範囲内で施行されます。

企業としては、人件費等に関して大きな負担が生じる可能性のある改正です。また、就業規則や雇用契約書の作成・見直し、契約更新を行わない有期労働契約者への雇止めの通知等、今後の実務対応も重要となります。

8月29日に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(改正高年齢者雇用安定法)が成立しました。この改正法は、来年4月1日から施行されます。

◆改正法の主な内容

(1)継続雇用の対象者を限定できる仕組みの廃止

現在、65歳未満の定年を定めている企業が、高年齢者雇用確保措置として「継続雇用制度」を導入する場合、継続雇用の対象者を限定する「基準」を労使協定で定めることができますが、この仕組みが廃止され、希望者全員を継続雇用の対象とすることが義務付けられるようになります。
なお、厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢に到達した以降の者を対象として、上記の「基準」を引き続き利用できる経過措置(12年間)が設けられています。

(2)継続雇用先企業の範囲の拡大

定年を迎えた高年齢者の継続雇用先を、自社だけではなくグループ内の会社(子会社、関連会社等)まで広げることができるようになりました。
なお、この場合には、継続雇用について事業主間における契約が必要とされます。

(3)違反企業名の公表規定の導入

高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれか)を実施していない企業に対して、労働局・ハローワークが指導・勧告を行い、それでも違反が是正されない場合には企業名を公表することがあります。

◆実務上重要となる「指針」の策定

今後、事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施・運用に関して、「指針」が策定される予定です。
この指針では、「業務の遂行に堪えない人」(健康状態の悪い人、勤務態度の悪い人等)をどのように取り扱うか(継続雇用の対象から外してよいか)などが定められる予定ですので、実務上は非常に重要となります。

 

 

非正社員の助成金を一本化へ

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厚生労働省は、非正社員を雇用する企業に対する助成金(「均衡待遇・正社員化推進奨励金」「キャリア形成促進助成金」「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」)を一本化する方針を固めました。
増加する非正社員の待遇や能力を向上させることで、安定した雇用に変えていきたい考えです。

 厚生労働省 雇用関係各種給付金パンフレット
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/koyouantei.html
 

東京都労働委員会から、平成23年における「不当労働行為審査事件」の取扱状況が発表されました。これによると、合同労組からの救済申立は89件(新規申立事件の約8割に相当)であり、過去10年では最高となっています。

以下では、労働委員会が取り扱った(命令を出した)、合同労組との団体交渉をめぐる最近の事例をご紹介します。

 ≪団交の時間・場所の限定が不当労働行為に該当したケース≫

この事件は、国立大学である大阪大学が、教職員組合による団体交渉の申入れに対し、開催時間を「午後0時から午後1時の昼休みの時間帯」と指定し、開催場所を特定の地区に限定したことが、不誠実団交に該当するとして、救済申立があった事件です。なお、以前は、団交は勤務時間中や勤務時間終了後に行われていたそうです。

初審(大阪府労働委員会)は、大学側に対し、団交申入れに開催時間・場所の条件を正当な理由なく限定しないことおよび文書交付を命じたところ、大学側はこれを不服として中央労働委員会に再審査を申し立てていました。

結論として、再審査申立ては棄却され、「大学が団体交渉の開催時間と場所を限定したことには正当な理由がなく、不当労働行為に当たる」とされました(7月9日)。

 ≪団交拒否が不当労働行為に該当したケース≫

千里金蘭大学(大阪)が、希望退職に応じなかった准教授(2人)が所属している労働組合と誠実に団体交渉を行わなかったのは不当労働行為に該当するとして、大阪府労働委員会は「不当労働行為を繰り返さない」とする誓約文を組合側に渡すように大学側に命じました(7月13日)。

大学側では、2010年10月以降、組合側と団体交渉を続けていましたが、2011年度の教員配置の詳細を明示しないまま、希望退職に応じない場合は事務職へ職種変更するとし、その後、准教授は2011年3月末に解雇されていました。