2014年5月アーカイブ

◆メンタルヘルスの状況は?

「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」という調査研究の結果が、経済産業研究所から公表されました。

この調査研究は、従業員のメンタルヘルスの状況を明らかにするとともに、メンタル不調を理由に休職する従業員がどのような要因で増加しやすいのか、また、従業員のメンタル不調によって企業業績が悪化することはあるのか、といった点を検証しています。

分析結果からは、「従業員数300~999人規模の企業」、「情報通信業」、「週労働時間が長い企業」でメンタルヘルス不調が多く見られることがわかりました。

また、メンタル休職者比率の平均は0.4%程度で、年齢層別では20~30歳代の若年層で目立っています。メンタル退職者比率では、規模の小さい企業でその比率が高くなっています。これは企業における病気休暇制度の普及度合いが密接に関係しているのでしょう。

◆どのような要因で増加しやすいのか?

労働時間が短いほど退職者比率が高いようです。これは、企業が把握している労働時間と、労働者の実労働時間との間に乖離がある可能性を示しています。

一般的に、企業規模が小さくなるほど総労働時間は長く、さらにサービス残業も多い傾向にある一方で、病気休暇制度は十分に整っていないと考えられます。このため、企業が把握する労働時間は短いが、サービス残業のために実労働時間は長くなっている労働者が多いと予想される中小企業では、メンタルヘルス不全に陥ると退職につながる割合が高い可能性があるということです。

◆メンタル不調によって企業業績が悪化する

メンタルの不調が企業業績に与える影響では、メンタル休職者比率は2年程度のラグを伴って、売上高利益率に負の影響を与える可能性が示されました。

休職者比率が労働慣行や職場管理の悪さを測る指標になっていると解釈すれば、メンタルヘルスの問題が企業経営にとって無視できないものとなっていると言えるでしょう。

◆何が有効な対策なのか?

メンタルヘルスの悪化要因や、職場の対策として何が有効であるのか、悪化の程度と企業業績への影響の関係など、職場のメンタルヘルスについては、まだ明らかになっていない部分も多いと言われています。企業が経営戦略としてメンタルヘルス対策に乗り出すのは、まだまだ暗中模索の状況なのかもしれません。

しかし、長時間労働の問題などは、後々の労使紛争の種ともなる問題ですので、企業は対策を検討する必要があります。

◆「ストレスチェック」の具体的内容

現在、国会で審議中の改正労働安全衛生法案に「ストレスチェック制度の義務付け」(従業員50人以上の企業が対象)が盛り込まれているのはご承知のことと思います。

このストレスチェックの内容は、下記の9項目について直近1カ月間の状態が「ほとんどなかった」「ときどきあった」「しばしばあった」「ほとんどいつもあった」のいずれに該当するかを労働者が回答し、その回答から判断される方法がベースになるようですが、今後、項目の変更や追加の可能性もあります。

(1)ひどく疲れた
(2)へとへとだ
(3)だるい
(4)気が張りつめている
(5)不安だ
(6)落ち着かない
(7)ゆううつだ
(8)何をするのも面倒だ
(9)気分が晴れない

 ◆これだけで本当にチェック可能!?

これらの質問に答えるだけでメンタル不調に該当するか否かを判断できるのか、甚だ疑問ではありますが、この9項目は旧労働省の委託研究を経て公開されたものであり、現在すでに使用されている「職業性ストレス簡易調査票」の一部に該当するものです。

◆職場のストレスの傾向は?

株式会社アドバンテッジリスクマネジメントによるメンタルヘルス対策プログラム(アドバンテッジEAP)の利用実績データ(2013年に約24万人が利用)の分析結果によると、職場のストレスについて、下記の傾向が明らかになったそうです。

・高ストレス者の割合は3年連続で増加

・年代別では「25~29歳」で高ストレス者の割合が高い

・男性のストレス要因は「心理的サポート不足」「仕事の量・質」

・女性のストレス要因は「意見尊重の風土」がトップ

改正法案の成立後、今以上にきめ細かなメンタルヘルス対策が求められることになりますので、これらの傾向も参考にしながら、自社における課題を明らかにしておく必要があるでしょう

 2010年4月に施行された改正労働基準法により、従業員数300名以上の企業の1カ月の時間外労働時間が60時間を超えた場合の割増賃金の割増率は50%以上とされていますが、中小企業については適用を猶予し、3年をめどに改めて適否を議論することとされていました。

このほど、政府は中小企業についても割増率を引き上げる検討に入り、2015年の通常国会に労働基準法の改正案を提出し、2016年4月からの施行を目指すとの報道がなされました。

割増率が引き上げられれば、企業の人件費負担が増す可能性がありますが、運送業のように残業時間を減らしにくい業種については、助成金等の措置も検討するとされています。